開発のものがたり

刺す海
イスラエルにはナザレやエイラットなどのリゾート地があります。
シーズンになればたくさんの観光客が訪れます。
しかし、90 年代それらの海岸「刺す海」として社会問題となりました。
海水浴客が、その海に入ると腕や脚、胸など、ひどい時には全身真っ赤になって海から上がってきます。
その原因は何かわかりません。
クラゲでしょうか?いいえ。この海岸はクラゲが出にくいのです。
それに調査してもクラゲはいませんでした。
クラゲの特性
クラゲは身を守るためと、獲物を捕獲するために刺すと言われていますが、
自らの意志で人を刺す事はないのです。
たくさんの触手(足のようにユラユラしている)を持っていますが、そこには刺胞が並んでいます。
触手が何かに触ると、その刺激で自動的に刺胞がやぶけて、それが肌に付着すると毒が注入され赤く腫れ上がってしまうのです。
刺胞はクラゲがクラゲのカタチをしていなくても、しばらくは生きているのです。つまり・・・

刺す海の原因はタンカー?
医療原料産出国であるイスラエルは、世界中に原料や石油を輸出していることでも有名です。
往路は大きなタンカーに石油を満杯にして運びますが、復路はタンカーはカラになります。
しかし、それでは重心が保てなくバランスが悪くなるため、海水を注入します。
そして母港であるイスラエルへ向かいます。
港に着くと、タンカーは大量の海水をイスラエルの海へ放出します。その中にクラゲが、いえ正確に言えば「刺胞」が大量に混ざっていたのです。
立ち上がったロタン博士
クラゲがいなくても「刺胞」が刺す。原因はようやく解明されました。
しかし、石油はイスラエルにとって最も大切な産業のひとつです。クラゲが刺すから、石油輸出を止めろとも言えません。そこで海洋生物学者のロタン博士が立ち上がりました。
「大切な子供たちが、安心して海水浴出来る海にしなくては!」
ロタン博士はクラゲの特性について、徹底的に調べました。そして、あることに気づいたのです。

クマノミと言う魚
クラゲの仲間にイソギンチャクがいますが、彼らと仲良しの魚に「クマノミ」がいます。
イソギンチャクは触手を持っていて、その働きはクラゲと一緒です。
獲物に毒を注入して捕獲するのです。
しかし、クマノミはイソギンチャクの触手に触れても大丈夫(クマノミはクラゲやイソギンチャクの触手についているゴミを食べることから生命関係上、刺されはしないのです)。
その秘密はこの魚の表皮を覆う粘膜にあることをロタン博士は発見したのです。
「この粘膜の成分を研究すれば、クラゲに刺されないメカニズムを解析できる」そう思った博士は研究に取りかかり、そしてセーフシー(Safe Sea)という製品を発表したのです。
海に入る前にセーフシー
「セーフシー」は国内で絶賛され、イスラエルでは、暑い日には熱中症にならないために帽子をかぶるのと同じように、海に入る子供たちは必ずセーフシーを塗ります。そして「刺す海」での被害は激減したのでした。ロタン博士は考えました。
「セーフシー(safe sea)で世界中の子供たちを守りたい」と。